日本人と仏教:平穏や未来への希望を祈ること

人とともに、時代とともに進化した仏教

紀元前5世紀頃、インドで誕生した釈尊が修行の後に悟った教えが仏教です。その教えは、聖書のように1冊にまとめて記載された内容ではなく、釈尊が一人ひとりに、各人のレベルに合わせて分かりやすく説いた教え。数百年後、その教えを受けた弟子である子や孫たちが、それぞれの立場で聞いた内容を仏典としてまとめていきます。そしてまた数百年後、弟子の弟子らが集まり、話し合って「こうであるべき」というその時代の結論を出すことによって、絶対の教えではなく、進化した教えとして引き継がれていきます。そのような教えが、中国へと伝わり、日本には聖徳太子が活躍した飛鳥時代に伝来。その頃の日本には、土着の自然崇拝や神道的な宗教があったと思われますが、仏教はそれらと共存しながら進化を遂げていきます。

暗い世相を受けて生まれた数々の宗派

飛鳥時代に日本に入ってきた仏教は、貴族などの上流階級の中で少しずつ広がっていきます。平安時代になって最澄、空海という傑出した僧が中国へと渡り、当時、最先端と言われた教えである密教を日本へ持ち帰ります。最澄は天台宗、空海は真言宗として、各々教えを広げていきます。平安末期から鎌倉初期にかけ、天変地異が相次ぎ暗い世相が続きました。そんな世相を受けて、天台宗の比叡山で修行していた法然が「浄土宗」(南無阿弥陀仏の名号を唱えると必ず極楽に往生できると説く)を起こします。比叡山からはほかにも、栄西や道元が各々、禅宗の「臨済宗」「曹洞宗」を起こし、日蓮は「南無妙法蓮華経」のお題目で人々の救済を図りました。法然の弟子である親鸞は、師の教えを進め「浄土真宗」を起こし、次々と新たな宗派が生まれていきます。

現在の日本人の宗教観と仏壇

現在、寺族以外で確固たる宗教観を持ち、生活している日本人は非常に少なくなっていることと思われます。しかし各々の心中にある仏心のDNAは生き続け、見えないものへの畏怖や尊厳を感じる方は多いことでしょう。日頃、お寺様とのお付き合いが希薄な方も、誰しもが自分のご両親やご先祖に対し、手を合わせる。その行為の中にこそ、仏心が養われるのではないでしょうか。ご自宅に仏壇という箱があることによって、日々の暮らしに、ご先祖を思う気持ち、落ち着いて自分を見つめ直す場所や時間が生まれます。日々のちょっとした祈りの中で、平穏や未来への希望を感じること。そういう意味において、現在もお仏壇が自宅にあるという意義は、大きいものと考えています。