金仏壇とは:職人の技術を結集した工芸美術の極み
漆塗りや金箔で、気品あふれる佇まい
伝統的な「金仏壇」は、檜(ひのき)、松、杉、欅などの高級木材を使用し、外側は漆塗り、内側には金箔が貼られたお仏壇のことをいい、内側の金箔は、極楽浄土を表現しているとも言われています。日本古来の伝統工芸の技法を結集しているため、様式や大きさにもよりますが完成まで約3か月、携わる職人の数は少なく見積もって10人以上と大変な手間をかけて作られています。そのため「金仏壇」の気品あふれる深い味わいは、工芸美術の極みと称されています。
キリスト教禁止令と檀家制度から広がるお仏壇の文化
戦国時代から普及したキリスト教ですが、江戸時代にキリスト教禁止令が幕府から出されました。また、同時に出された檀家制度も相まって、人々は仏教に帰依することを義務付けられます。江戸時代の主流は「金仏壇」で、京都、大阪、名古屋を中心に生産されていました。現在では、全国にある15の金仏壇の産地が伝統的工芸品の指定を受けています。
職人により手間をかけて作られた金仏壇は、代々受け継ぐこともできる
金仏壇の製造における9つの工程をご紹介します。各工程を専門の職人が担当していきます。
1.木地。木材で生地を作り、お仏壇の仮組をします。
2.下地。木地の上に下地と言われる塗装をします。
3.塗り。伝統的な塗料は漆ですが、カシュ―塗料や化学塗料も使用します。
4.金箔・金粉押し。金仏壇の名に由来する重要な工程です。金箔には各々等級があります。
5.蒔絵。漆で文様を描き、金粉や銀粉を付着させます。現在は簡単な技法もあります。
6.彩色。お仏壇の彫刻や柱に色をつけます。
7.彫刻。欄間や障子の腰、柱飾りなどに彫刻を施します。
8.錺金具(かざりかなぐ)。補強や装飾に使われる金具を作り取りつけます。
9.仕上げ。できあがった各部品をお仏壇に取り付けて、一基のお仏壇が完成します。
使用する金箔の含有量や作業の複雑さによって価格は大きく変化します。現在は機械化などにより安価に提供できる金仏壇もありますが、職人が手間ひまかけて作った美しい金仏壇には見劣りしてしまいます。そういった金仏壇は、時を経て古くなっても買い替えることなく「塗り替え」という技法で新たに蘇らせることができます。工程が細かく分かれているので、結果的に分解することも可能です。
なお、浄土真宗は、東本願寺を本山とする真宗大谷派と西本願寺を本山とする本願寺派などに分かれています。「お東」、「お西」と表現するのですが、それぞれで宮殿 、柱などの部分に違いがあるため、購入の際は自分の宗派の確認をしておくことが必要です。